想ってごらん|新・反戦歌論 ─ 優しく笑うアシタを ─ 表紙

想ってごらん

新・反戦歌論 ─ 優しく笑うアシタを ─

【プロローグ】想ってごらん──この歌が生まれるまで

想ってごらん 空に国はないって
みんな ただソラノシタ 生きているだけ

ニュースアプリを開くたび、どこかで爆発音がしている。 でも、近所のスーパーでは今日も特売が並んでいる。 その落差の中で、「自分は何をしているんだろう」と 小さなざらつきが胸のあたりにこびりついていた。

そんなある日、ふとジョン・レノンの「Imagine」を検索して、 あらためて歌詞を読んでみた。遅まきながら、 「ああ、これはまぎれもなく反戦歌だったんだ」と 体の奥からストンと腑に落ちた。

そこで思った。「じゃあ、今の日本語で、 今この時代を生きている自分のことばで歌いなおしたらどうなる?」 それが、この歌のスタート地点だった。

英語の詩を直訳するのではなく、 「自分が友だちに話しかけるとしたら、なんて言うだろう?」 という距離感で一行ずつ書き直していったら、 最初に出てきたフレーズがこの一節だった。

空に国はないって。 旗も、国境も、勝ち負けも、とりあえず全部いったん脇に置いて、 「みんな同じ空の下にいる人」から話を始めてみる。 そんな歌にしてみよう、と決めた瞬間だった。

歌が生まれた場所

想ってごらん 今日という日を
争いもないセカイを

歌が生まれた場所は、立派なスタジオでも、 大きなステージの袖でもない。 スマホを握りしめたまま、 こたつのテーブルにうつ伏せになっていたオジサンの心の中だ。

タイムラインには怒りと正義と陰謀論と宣伝が入り混じり、 誰かが誰かを責め続けている。その横で、 猫動画とラーメンの写真が流れてくる。 それが今の「世界の見え方」になってしまっている。

でも、本当に「今日という日」は、 それだけで埋め尽くされているのだろうか。 誰かがコーヒーを淹れている音、 子どもがランドセルを放り投げる音、 遠くで電車が通り過ぎる音。 そういう音たちも、同じ一日の中にちゃんと混ざっているはずだ。

反戦を語るとき、つい「世界」や「歴史」といった 大きな言葉を持ち出したくなる。けれど、 その一歩手前の「今日一日をどう生きるか」という感覚が すっぽり抜け落ちると、 言葉はどんどん尖ってしまう。

だからこの章では、あえてスローな視点で語りたい。 「争いもないセカイ」とは、 どこか遠くのユートピアではなく、 いま自分が立っている床の上から、 じわじわと始まっていくものなのだ、という話を。

レゲエとウクレレがつなぐもの

夢見るだけなら 私にもできる
きっと あなたも いっしょに想えるはず

反戦歌というと、どうしても「叫ぶ歌」のイメージが強い。 拳を突き上げ、声を張り上げ、 権力や暴力に向かってストレートに抗議する。 そのスタイルには大きな意味があるし、歴史もある。

でも、あえてそこから半歩ズレてみたかった。 もっと肩の力を抜いて、 ただ首をゆらゆら揺らしながら、 いつのまにか口ずさんでしまうような歌にしたかった。

そこで選んだのがレゲエのリズムだった。 どこか後ろノリで、だけど前向きで、 歩きながらでも洗い物をしながらでも つい体が揺れてしまうような、あの感じ。

さらに相棒に選んだのがウクレレだ。 戦車のエンジン音に負けるような小さな楽器。 だからこそ、街角でも公園でも、 誰かのリビングでも鳴らすことができる。

「戦争反対」と叫ぶ前に、 まず「いっしょに想ってみない?」と誘うための音楽。 レゲエとウクレレは、その橋渡し役として ぴったりのコンビだと思っている。

AI 作曲との共同制作

想ってごらん 持ちものなんてなく
欲張ることも 飢えることもない

この歌の作曲を担当したのは、人間ではない。 SongMaker.AI というアプリだ。 キーワードと雰囲気を放り込むと、 あっという間にそれらしいメロディーを返してくる。

最初は「楽ちんでいいじゃないか」と思った。 ところが何度か試すうちに、 だんだん腹が立ってきた。 「お前にぜんぶ任せたら、 オレの言葉はどこに行っちまうんだ?」と。

そこから態度を変えた。 「おまかせ」ではなく「共同制作」にする。 まず自分で歌詞をきちんと書き、 テンポやリズム、雰囲気をこちらから細かく指定していく。 出てきたフレーズを何度も聴きながら、 気に入らないところは遠慮なくボツにする。

AIは便利な道具だ。でも、 こちらが何も差し出さなければ、 何も本当のものは返ってこない。 「持ちものなんてなく」と歌いながらも、 実は自分の中にある経験や感情を ぜんぶ投入してこそ、 はじめて歌になるのだと痛感した。

だからこの曲のクレジットには、 きちんと「作曲:SoundMaker.AI」と書いたうえで、 その横に「作詞:アバウト佐々木」と並べておきたい。 これは、人間とAIの小さな共作ドキュメントでもあるのだ。

なぜ反戦歌なのか

想ってごらん みんなでわけあう
あたたかいこのホシを

「反戦」という言葉には、 どうしてもイデオロギーの匂いがまとわりつく。 右か左か、賛成か反対か。 いつのまにか、 「どちらの陣営に属しているか」を問う言葉になってしまった。

でも本来、戦争の被害は、 そんなラベルを軽々と乗り越えてしまう。 砲弾は右派だけを選んで落ちてくれないし、 飢えは左派だけを見逃してはくれない。

だからこの歌で語りたかったのは、 政治の話ではなく「暮らしの話」だ。 ここにいる人たちと、 このホシをどうやってわけ合って生きていくのか、 という、もっと手触りのある問題としての反戦。

遠くの戦場に思いを馳せることも大事だが、 同時に、すぐそばにいる誰かを これ以上傷つけないように暮らすことも、 立派な「反戦」だと信じている。

その感覚を、「あたたかいこのホシ」という 少しとぼけた言い方に託してみた。 地球の写真を眺めながら、 「ホシ」という音の丸さにすがりたくなったのだ。

ウクレレ一丁、声一つ

夢見るだけなら 私にもできる
きっと あなたも いっしょに想えるはず

この歌を広めるために、大きな仕掛けは考えていない。 世界ツアーも、巨大フェス出演も、たぶんない。 あるのは、ウクレレ一丁と、まだそこそこ出る声だけだ。

マイクもPAもない場所で歌うのが好きだ。 公園のベンチ、商店街の隅っこ、 友だちのリビング、デモ行進の集合場所。 そこにいる人たちの表情を見ながら、 その場の空気でテンポを変えたり、 歌詞をちょっとアドリブでいじったりする。

立派なステージがなくても、歌は始められる。 「準備が整ったら」ではなく、 「今ここでできる範囲で」歌い出してしまう。 その身軽さが、ウクレレと反戦歌の相性の良さだと思う。

そして、聞いてくれた人が ひとりでも口ずさんでくれたら、もうそれで十分だ。 歌はコピーされるたびに、 ほんの少しだけ世界の重心をずらしてくれる。 その小さなずれの積み重ねを信じたい。

「想ってごらん」が見せるアシタ

想ってごらん すべてが一つに
境界も壁も いらない世界を

歌い続けているうちに、 自分の中で「アシタ」のイメージが 少しずつ変わっていった。

最初は、戦争のない世界、という 抽象的なビジョンだった。 けれどライブで歌っていると、 もっと具体的な顔が見えてくる。

サビに合わせて体を揺らす子ども。 目をつぶってじっと聴いている年配の方。 ちょっと離れたところから こっそりスマホで撮っている若者。 その一人ひとりの表情が、 「境界も壁もいらない世界」の断片に見えてくる。

大きな歴史を変えることはできなくても、 目の前の一人の心の重さを ほんの少し軽くすることなら、 もしかしたら歌にもできるかもしれない。

「優しく笑うアシタ」とは、 戦争が完全になくなった後の理想郷ではなく、 今日よりちょっとだけ 互いを傷つけずにすむ明日のこと。 そのささやかなジャンプのための BGM になれたら、と願っている。

【エピローグ】優しく笑うアシタを

想ってごらん 手をとりあって
優しく笑うアシタを

立派な理論も、鋭い分析も、この本にはあまり出てこない。 あるのは、一曲の歌と、それをめぐるオジサンの試行錯誤だけだ。

それでも書きたかったのは、 「反戦」という言葉を もう一度、日常の言葉に引き戻したかったからだ。 怒りや憎しみの前に、 まず「一緒に笑える明日を想ってみない?」と 誘うための歌があってもいい。

もしあなたが今、 イヤホン越しにこの歌を聴いてくれているなら、 あるいはスマホのスピーカーから ちょっとチープな音で流してくれているなら、 それだけで十分すぎるくらい嬉しい。

次に誰かと会ったとき、 心の片隅でそっとこのフレーズを 口の中でもごもごと転がしてみてほしい。

「夢見るだけなら 私にもできる きっと あなたも いっしょに想えるはず」

その一瞬、あなたはもう、 この新しい反戦歌の共作者だ。 歌は、口ずさんだ人の数だけ増殖する。 そしてどこかで、 優しく笑うアシタを、 本当に少しだけ早く連れて来てしまうのかもしれない。

このスマボンは、ウクレレ一丁の路上ライブから、 リビングの読書タイムまで、 どこにでも持ち歩ける「ポケット反戦歌論」として あなたのスマホにそっと沈んでいる。

ウクレゲエシンガーのアバウト佐々木
ウクレゲエシンガーのアバウト佐々木

巻末付録:JUKEBOX & 歌詞カード

最後に、このスマボンの主役である オリジナルソング『想ってごらん』を、 歌詞カードを眺めながらじっくり味わってほしい。 下のプレイヤーから再生してどうぞ。

※ 通信量が気になる場合や、フル画面で観たい場合は、 YouTube アプリでの再生をおすすめします。

『想ってごらん』歌詞

想ってごらん 空に国はないって みんな ただソラノシタ 生きているだけ 想ってごらん 今日という日を 争いもないセカイを 夢見るだけなら 私にもできる きっと あなたも いっしょに想えるはず 想ってごらん 持ちものなんてなく 欲張ることも 飢えることもない 想ってごらん みんなでわけあう あたたかいこのホシを 夢見るだけなら 私にもできる きっと あなたも いっしょに想えるはず 想ってごらん すべてが一つに 境界も壁も いらない世界を 想ってごらん 手をとりあって 優しく笑うアシタを 夢見るだけなら 私にもできる きっと あなたも いっしょに想えるはず

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